研究内容のやさしい解説その0:光電子分光を知る為の予備知識


0−3.さまざまな"光"

 が「少なくとも波としての性質を持っている」ことを前ページで説明しました。ここでは前ページ最後の「光の粒子性」云々の話はちょっと脇においておいてください。

 光を波として捉えた場合、光を特徴づける量として「波長」があります。波長とは上図のように一つの波の長さの事です。私達人間が「目に見える」光の波長というのは大変短いものでして、だいたい390ナノメートルから770ナノメートルの範囲です。これをミリメートルに直すと

0.00039〜0.00077ミリメートル

です。そしてこの範囲内で波長が変化すると人間の目で感じる「色」が変わってきます。この色の順番は虹の並ぶ順番でして、波長の短い順に紫、藍、青、緑、黄、橙、赤となります。それでは人間の目で見える波長以外の波は存在しないのか、というとそういう事はなくて単に目で見えないだけです。例えば夏の暑い日に太陽の光が肌に当たると黒く焼けてしまう、という事がありますが、これは「光」、可視光よりも波長の短い「紫外線」が肌に当たった為に起きます。寒い冬にはこたつに入って暖まる、というのはこたつが「赤外線」を出していて、それが足にあたって暖まっているのです。また、携帯電話やテレビというのは画像や音声の情報を電波に変換して送受信していますが、この電波というのは「電場の波」そのものです。前ページで「光とは電場と磁場の波である」と説明しましたね。そう、実は目に見える光も電波も同じ種類の波で、ただ波長が違うだけなのです。他に同じ種類の波としては電子レンジで弁当を暖めるのに使うマイクロ波、レントゲン写真を撮るのに使われるX線等があり、それらを整理すると下図のようになります。

 先ほど述べたように、電波も赤外線も目に見える光(可視光)も紫外線もX線も同じ種類の波なのです。これらをまとめて「電磁波」という事もあります。また、これらの波全てをまとめて「光」と呼び、目に見える光の事を「可視光」と呼んで区別する事もあります。この解説では目に見えようが見えまいが「光」と書いたりします。こうしてみると「可視光」というのは電磁波のほんの一部にすぎないという事も分かりますね。

 私達の研究室で行っている「光電子分光」は、勿論(広い意味での)光を用いた実験ですが、用いる光の波長は0.8〜80ナノメートルで、可視光に比べると非常に短いものです。この範囲の光はよく「真空紫外光」及び「軟X線」と呼ばれます。「真空紫外光」とは殺菌などに用いられる紫外線よりも短い波長の光で、大気中、空気中を通り抜ける事ができないのでこう呼ばれます。また「軟X線」というのは真空紫外光よりもさらに波長の短い光です。ちなみに0.8〜80ナノメートルという波長の光はエネルギーに直すと2.4x10-18〜2.4x10-16ジュール(15〜1500電子ボルト)となります。って、そういえばエネルギーの事について何も説明していませんでしたね。次ページでは少しエネルギーというものについて解説していきましょう。





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