光電子分光で最も相手にする事が多いのは電子です。さて、電子1個の質量(重さ)というのはだいたい
です。本当にちっちゃくて軽い事が分かりますね。このような物を相手にするときに日常生活で使う単位(メートル、キログラムなど)を使っていてはそのたびに0を何ヶもつけなくてはならず、間違いの元です。前のページでもやたら0がついていましたよね。物性物理の世界というのは、非常に小さな量を扱う訳で(そのくせ非常に小さな量について調べて日常生活でも見えるような大きな世界の事が解明されてしまうという面白さがあるのですが、それはさておいて)、メートルとかキログラムとかジュールといった単位が不便になり、別の単位を用いる事が多いのです。ここではそれらについて説明します。
よく用いられる長さの単位です。記号は大文字のAの上に小っちゃい白丸をつけたものです。
になります。何でこんな単位が使われるかというと、これで物性物理であつかう長さにちょうどよいからです。例えば
となる訳です。
電子の持っているエネルギーを表すときによく用いられまして、eVと記します。定義は
です。ちょっとややこしいですが、物理でならうジュール(J)に直すと
となります。ちなみに1電子ボルトの運動エネルギーを持つ電子の動く速さというのはだいたい秒速600キロメートル(600km/s)と相当速いものになります。ちょっと難しいですが、価電子帯のエネルギー幅というのが大体数電子ボルトです。
光のエネルギーにも、この電子ボルトを用いる事があります。特に光電子分光ではよく使い、記号でhνと表します。ここで光のエネルギーというのは「1つの光子の持つエネルギー」を指します。光の波長が10オングストロームの時の光子のエネルギーは大体1250電子ボルト、光電子分光で用いられる光の波長の範囲は8〜800オングストロームですからエネルギーに直すと15〜1500電子ボルトになります。ちなみに可視光のエネルギーというのは約1.5〜3電子ボルトとなりまして、光電子分光に使うには小さすぎるエネルギーです。
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