「太陽光発電」とか太陽電池という言葉はご存知の方も多いでしょう。特に近年の環境問題もあって、太陽光発電が「クリーンエネルギー」の候補として注目されていますね。で、よくよく考えると「光で発電できるのか」といううことになって、実際光で発電できます。ということはですよ、光はそれ自身がエネルギーを持っているのか?という事ですが、そうです、光それ自身があるエネルギーを持っているのです。太陽光発電という時には、光のエネルギーを電気のエネルギーに変換しているのです。ここではその光のエネルギーがどれくらいか、という話です。
光をというような感じで捉えていると光のエネルギーってよく分からないので、ここでは光をと捉えて「光は粒子だ!」としてみましょう。この話は前にも出てきましたね。光量子仮説です。この場合、光は1個1個の光子という粒子の集まりだと考える事ができます。そうすると1個の光子のエネルギーはどれくらいか?という事がわかれば良いのですが、この光子というのは何故かそれぞれ独立した「周波数」を持っています。で、周波数って何?ということになりますね。
上図は「2.光は波ってよく言うけど...」でも出てきた図ですが、そこでは「光は電場と磁場が振動しているものだ」と説明しました。周波数とは、「1秒間の間に何個の波の山を越えたか」という量です。別の言い方をすると、「ある地点での波の振動した数」です。テレビやラジオ、携帯電話で「周波数」という単語が出てくる事がありますが、それも全く同じ意味で、ヘルツ(Hz)という単位はしばしば聞くでしょう。周波数の別名で「振動数」という言葉が使われる事もあります。で、ここで再び物理の授業になってしまうのですが、波長と周波数の関係というのは光の場合
となります。
ではここで光子のエネルギーに戻りましょう。結論を言うと、1個1個の光子はそれぞれ決まった周波数(よくνという記号で表します)を持ち、それぞれの光子は周波数に比例したエネルギーを持ちます。その比例係数が「プランク定数」と呼ばれるもので、通常hで表されます。つまり
訳です。ちなみにプランク定数の大きさは
という大きさになります。携帯電話の受信も電波という名の光子をアンテナに受け取っていると考える事ができます。周波数1.5GHz(1.5ギガヘルツ、「1ギガヘルツ」は1000000000ヘルツです)の携帯電話の場合、だいたい
のエネルギーを持つ光子を使っているとも解釈できるわけです。赤色の光の波長はだいたい700ナノメートル、0.0007ミリメートル、0.0000007メートルで光の速さは秒速30万キロメートル、秒速300000000メートルなので赤い光の周波数はおよそ430000000000000ヘルツ(430000GHz)となって、エネルギーに直すと
です。非常に小さいエネルギーのように感じますが、実際小さいですね。だってたった1ccの水の温度を1度上げるのに必要なエネルギーがおよそ4.2ジュールですからね。だから水に光が当たっても沸騰なんかしないのです。
さて、これで説明終わりと言えば終わりなのですが、ある人は「光は粒子だと言っておきながら明らかに波の性質を使っているではないか?なんかおかしくないか?」と思われるかもしれません。無理もないですね。私も書いていて変だな、と感じますから。でもこう思ってしまう原因というのはつまるところ「波という概念と粒子という概念を相反するものとして無意識に考えてしまう」というところにあるのではないかと思います。実際のところ光は(人間が概念として持っている)波としてだけでも粒子としてだけでも捉える事ができない代物ですから。いえ、光だけではありません。電子だって、原子を構成する原子核だって、その集合体である私たち自身だって実は純然たる粒子の集合としてだけ捉えるのは本当は正しくないんですよ。たまたま日常生活では「粒子」として考えやすい性質が前面に出ているだけで、ミクロな世界に行くと特に電子は「波」として捉えた方が良い局面も出てくるのです。自然というのもなかなか複雑なのです。
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