最後に価電子ではなく原子核の近くに束縛された、内殻準位の電子を観測する内殻光電子分光について解説します。これは伝統的な実験手法で実験室でもX線管を使って古くから行われています。内殻電子のエネルギーは属していた元素が何だったかでほぼ決まりますが、逆に物質の結晶構造等で大きくは変わりません。ですから化学分野では内殻光電子分光で"未知物質の中にどんな元素が入っているか"を知る元素分析の手法としても使われます。一方で、特に強相関物質を測定するとピーク構造が複雑になる事が知られています。これは内殻準位の電子を飛ばす事で一時的に電荷のバランスがくずれ、その効果で価電子状態も変化し、さらに出ていく光電子にその情報が伝わっているのです。固体物理の分野ではこの現象を利用して、内殻光電子スペクトルを詳細に解析することで価電子状態、特に電子相関の効果がよく分かることがあります。関山研でも勿論この実験をしています。


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大阪大学 関山研究室