光電子分光には電子状態研究に有効ですが欠点もあります。それは従来高精度で実験可能な真空紫外線を使うと、光電子が主に物質表面から出てくる事です。これは表面研究には利点ですが、物質内部の電子を見たいという時には深刻な問題です。殆どの物質では内部(バルク)と表面で電子状態が異なり、強相関物質ではそれが顕著です。ですから光電子の結果が他の実験結果とつじつまが合わないという事もしばしばありました。この欠点は使う光のエネルギー(波長)を大きく(短く)することで随分改善されるのですが、代わりに単色化の精度が非常に悪かったのです。関山が長年在籍・活動していた菅研では、この難点を打開する為に高輝度放射光施設SPring-8で高精度に単色化されたエネルギーの高い軟X線を使って光電子分光を行うというプロジェクトを世界で初めて成功させました。その成果はNatureにも掲載され世界的にも高い評価を得ただけでなく、今もなお高エネルギー光電子分光でフロントランナーとして活躍しています。


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大阪大学 関山研究室